3.【記憶のプロセス】「思い出」はなぜ記憶されやすい?

【ゼロ知識→新知識】

【誤知識→新知識】

これまで見てきたように、記憶には人類共通の原理があり、あなたもその原理にしたがって、すでに膨大な量の物事を記憶しているのでした。そして原理的に記憶とは、思い出した回数で決まるものでした。

今回は、より具体的に記憶のプロセスを見ていきましょう。

思い出す…このとき一体、「何」を思い出すのでしょうか。

記憶のプロセスには、何も知らなかった状態のところに初めて起こる、最初のワンクッションがあります。そのことを「思い出す」回数が重ねられると、記憶に残っていきます。

この最初のワンクッションのことを、「関連付け」と呼ぶこととします。

そのうえで、記憶のプロセスを再整理してみましょう。

  • 1.脳内での新しい関連付け(A→○○なのか、ということを初めて認識する)
  • 2. 忘れる
  • 3.A→○○だったなと思い出す
  • 4.忘れる
  • 5.A→○○だったなと思い出す

このサイクルの先に、いつでも「記憶」として情報を取り出せるという状態になるのです。

「関連付け」とは、例えば脳内で「△△大陸のリンゴ→金色」などのように、「新情報」として認識することを意味します。

記憶に必要な「思い出す」回数の手前には、このような何かを新情報として関連付ける作用が脳内で働いているのです。

この「関連付け」は、とても大事なステップです。

まず、新しい道を覚えるときのことを考えてみましょう。

いつもの駅からの、どこか新しい場所へ歩いている時のことを、あなたもイメージしてみてください。

…いかがでしょう?

このとき脳に、「○○→曲がるところ」というような、事柄やイメージが認識されたのではないでしょうか。

この「○○→曲がるところ」という情報のように、最初に脳内で起こる働きが「関連付け」です。

そして何度かその道を通っている間に「〇〇→曲がるとこだったな」というように、「関連づいたもの」を「思い出す」作業が行われていることを想像できるでしょうか。

このサイクルを繰り返していると、いつの間にかあなたはその道を覚えている、というのが実際の記憶のプロセスです。

一方で、勉強に限らずに覚えにくいものというものが、人によっては存在します。

例えば、人の顔や名前、外国語名などのカタカナの横文字などです。

これは、「関連付け」がうまく行きづらいからです。

イメージによる人の情報にしろ、事柄による人の情報にしろ、明確な「○○→A」という関連付けがなければ記憶定着への障壁になりますし、「○○→A」の○○の部分が聞きなれない外国語の羅列であれば、それも関連付けに当たってはもちろんハードルとなるものです。

とはいえ、結局友達や家族のことは覚えていますし、マンガやアニメなどの馴染みのない音でも最終的には記憶ができているはずですので、心配はありません。

さて、あなたも新しい道を覚えてきた…、という話に戻ります。

あなたが道順を覚えてきたプロセスには、実はひとつ、見過ごせない大事なポイントがあります。

それは、あなたは「○○を曲がる」ということを、100のエネルギーや労力を使って、一発で覚えようとはしていない、ということです。

これは道順ではなくても、例えば箸の使い方や、新しく聞いた日本語でも一緒です。

…どうでしょう?

何事においても1発で覚えたという経験は、あなたもない場合がほとんどではないでしょうか。

(ちなみに言葉をど忘れすることがあっても、箸の使い方を忘れないのは、運動記憶という、少し種類の違う記憶だからです)

このように、あなたが何か新しいことを覚えるときは、ちょっとずつ思い出す経験をしながら、いつの間にか覚えていた、というのが実際のところです。

だから、例えばひとつの単語を全集中して1発で覚えようとすることは、実はあまり理にかなっていないのです。

ところが、あなたの「思い出」については例外です。

ちょっとだけ考えてみてください。

いつものルートは覚えるのに3~4回かそれ以上かかったかもしれませんが、「思い出」のような大きな体験は、1回きりのことでも、ずっと覚えているのではないでしょうか。

実は、これには理由があります。

科学的に、「強烈な体験」は記憶に残りやすいとされていますが、それは一体なぜでしょうか。

そのことは、あなた自身の「思い出」が説明してくれます。

あなたの「思い出」を、ちょっと頭に描いてみてください。

怪我した時の情景、サプライズで嬉しかった時のこと、頑張ったことが報われた瞬間ー。

いかがでしょうか。良いことでも悪いことでも、それらはかなりインパクトの大きい出来事だったのではないでしょうか。

このように刺激が大きい場合、簡単に関連付けが行われるため、「思い出す」プロセスがなくとも記憶から取り出せる状態になるのです。

そして、この「思い出」には、科学的に必要な記憶の条件が見事にそろっています。

例えばあなたの思い出も、

「あのとき○○だったな、AAがBBしてたな、☆☆な日だったな」

などのような事柄が出てきたり、情景が次々浮かんできたりするものと思いますが、これはなにか「ストーリー」のような形式になってはいませんか?

このことは、記憶術の世界で「ストーリー法」と呼ばれているものにあたります。

「ストーリー」形式であると、記憶は定着が容易なのです。

〇→△→☆のような話の展開は、次々と「関連付け」が行われていると言うこともできますし、それらがストーリー形式であると、「思い出し」やすいのです。

これらを踏まえると、あなたの「思い出」がなぜ記憶されているかということは、次のように説明ができます。

あなたの「思い出」は、強烈な体験としてもストーリーとしても「関連付け」が強く行われていて、「思い出」として「思い出す」回数も多かったであろうことの結果、記憶に定着しているー。

どうでしょう。

記憶の仕組みもだんだん理解できてきたのではないでしょうか。

このように、あなたが覚えていった物事の中には、「覚える」ために大事な要素がたくさん隠されています。

それと同時に、よくある勉強法や記憶法が、なぜ科学的に効果がないのかということも、わかってきたかもしれません。

それでは、実際にどのような「覚え方」をすれば良いのか、考えていきましょう。

何が効果のある方法で、何が効果のない勉強法なのかー。

まず、効果のない勉強法についてみていきます。

効果のない勉強法では、勉強しているようでありながら、実際には全く異なる現象が脳には起きています。

この現象を体感してみると、正しい記憶法にはどのような体験が必要なのか、あなたも肌で理解できるようになるでしょう!

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